舞台は小説よりも奇なり『オペラ座のお仕事』
音楽は好きでクラシックをよく聴きます。しかしながら、オペラに触れたのは高校時代の音楽の授業程度。
そんな私が初めて自分から"オペラ"に触れるきっかけとなりました。
オペラ座のお仕事──世界最高の舞台をつくる (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: 三澤洋史
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/09/21
- メディア: 文庫
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著者の三澤洋史さんは新国立劇場で合唱指揮者を務めていらっしゃいます。この本では、三澤さんが如何にして音楽の道を志すに至ったのかという話から合唱指揮者という仕事の話、出会った人、オペラのこと、世界で活躍する指揮者のことなどに触れられており、大変興味深い内容でした。
音楽というものは本当に信頼関係の上に成り立っている。どんなに意見が食い違ったとしても遠慮も妥協もせず、時にはぶつかり合いながら進んでいく。そうして"より良いもの"を作り出していくのが本当のプロであり、そうすることで本当の意味の信頼関係が築かれていくのだという事を肌で感じる事ができました。
三澤さんという人物は実に探究心に溢れています。自分の進むべき道のための努力を惜しまず、全力でぶつかっていく。
勉強熱心で、行動力もあり、自らの道を自らの手で切り開く力を感じました。こういう方を人は「才能のある人」と呼ぶのかもしれません。ですが、決して「才能」があったから成功した訳ではありません。
音楽に対する情熱や研究心、自分の知への探究心。それらを兼ね備え、常に学ぶ姿勢を忘れなかったからこそ成功したのだと思います。
もちろん、人が成功するための要素として才能は必要だと思います。ですが、その才能を開花させることができるかどうかは自分次第です。三澤さんが持っていた才能はきっと、自分の知の欲求に忠実で、それらを全てを楽しむことができることだったのでしょう。
私はこの本の中で印象に残っている言葉が2つあります。
まず1つめは「自分のやりたいことは迷わずやればいい。人の目など気にすることはない。」という言葉。
そしてもう1つが「人の言葉というのは重いんだね。いつも真実に感じ、真実に語り、真実に生きていくべきなんだなと、身を引き締めた。」という言葉です。
人の言葉は重い。それは良くも悪くも。言葉には力があるからこそ、発言には気をつけないといけないし、日々の言葉を大切にしたいです。
本書から三澤さんの人柄の良さがとても伝わってきて、一度三澤さんのオペラを観に行ってみたくなりました。そして、実に面白かった!自分の知らない世界を覗くというのはなんと素晴らしいことなんだろう。